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Vol.80 特報!「省エネ基準・義務化」後の「既存不適格」の回避!

2020年の省エネ基準・義務化後に現在、新築住宅の資産価値が激減する恐れ?
耐震基準の変更で生まれた「既存不適格住宅」は、省エネ基準の義務化でも起こりうる。

2017年8月28日更新

2020年の省エネルギー基準の義務化により、断熱性能の違いで、大きな影響が考えられます!

すでにご存じの通り、昨年(2016年)「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が成立しました。これによって住宅の質の三大要素の一つである「省エネルギー性能」(以後・省エネ性能)の義務化が始まります。
住宅の「省エネ性能」に対しての義務、つまり守らなければならない最低限度の省エネルギー基準(以後・省エネ基準)を定める法律です。 現在の「省エネ基準」は「日本住宅性能表示基準」温熱環境対策等級1〜4で定めていますが、義務化はありません。「省エネ基準」が任意基準だった事を意外に思われるかも知れませんが、これまで我が国では住宅の「省エネ性能」に最低基準という縛りはなく、縛りがあるのは「住宅金融支援機構」の(フラット35)など、公的融資を受けるための要件に盛り込まれ、この様な融資を受けないで建築するのであれば、無断熱の住宅でも合法的に建てることが出来、断熱性能が「省エネ基準」に満たない住宅が全国に建てられてきました。我が国のローコスト住宅のほとんどが断熱基準未満の住宅です。冬に暖房が必要となる先進国で、無断熱でも住宅が建てられる国は日本以外にはありません。
我が国全体では、断熱性能とは名ばかりの非常に低い断熱性能のままで、今日に至っています。公的な融資を受ける場合も本州ならば、グラスウール100mmの施工で、ほとんどが断熱基準をクリアーしています。
我が国の高性能住宅の場合は、フランチャイズや先進的な工務店でガラパゴス化しており、一般的な施工店と先進的な施工店では、その性能差は雲泥の差が出来てしまっていますが、同じ土俵で住宅建築が行われてきました。

国が決めた住宅の質の三大要素は「耐震・耐久・省エネ」

(図・1)は先進国と我が国の「省エネルギー基準」の取り組みを示した物ですが、我が国は2020年の義務化でようやく先進国の仲間入りを果たすことになります。
そこで問題になるのは、2020年からの「省エネルギー基準」義務化なら『今なら高性能を求める必要は無いのだから、義務化される前に出来るだけ安い住宅会社で建ててしまおう』そのような考えを持つ建て主様は、いないとは思いますが「フラット35」の要件程度で施工している施工店の場合は、そのような考え方で住宅を建てているかも知れません。
少なくとも『2020年から「省エネ基準」の義務化が始まります。当社ではこの様な対応を行っています』と言う義務化に対する明確な対応策を語ってくれる施工店を選ぶべきではないでしょうか?「省エネ基準」義務化の話をしてみて、対応策が示せない施工店は選択から外すべきだと思います。

義務化前に建てられた住宅、現在建築中の住宅の評価はどのようになるのか?

この法律は私達の生活に大きな変化を起こす可能性があります。今、住宅を所有している皆様や建築中の皆様、2020年までに住宅を建築・購入予定の皆様は、この法改正が住宅購入者にどの様な影響があるのかを知っておく必要があります。
2020年の「省エネ基準」義務化以降の基準に満たない住宅を建ててしまった場合、義務化以降は車の場合なら型落ちになるという意味で、将来の資産価値が低くなってしまう危険性があります。 我が国も欧米並に中古住宅の流通が普通になる時代に、新築したての住宅が、断熱不良の資産価値の低い住宅として扱われる危険があるからです。

過去に類似した法改正、「耐震基準」の例

実は過去にも似たようなことがありました。それは三大要素の一つである「耐震性能」です。 耐震基準には1981年に施行された、現在の基準である「新耐震基準」とそれ以前の「旧耐震基準」という2種類の基準が併存しています。

1981年より前の「旧耐震基準」の建物を「既存不適格」といいます。現在の耐震性を満たしていない違法建築という意味です。ただ、違法建築と言ってしまうと、建てた当初は合法だったので「既存不適格」という呼び方をしました。現行法で見るとNGですが、建築当時は適法でしたので、限りなく違法に近い建築物という意味です。
今から36年前の法律ですから当時新築された住宅も、木造住宅の場合は多くが建て替えられていて、問題は少なくなっていますが、大規模マンションの場合は人命に関わることなので、大方は耐震補強されました。しかし中・小規模マンションの場合、このマンションを財産と見たときにどのように影響したのか?
これから住宅を建てる皆様には重要な示唆になります。「既存不適格」のマンションは耐震改修しないと流通しませんが、流通しても買いたたかれている現状です。耐震改修が行われない建物は、価値の減衰で次々に持ち主が代わり、最終的にスラム化してしまいます。
新基準が施行される前の「旧耐震基準」で建てられた木造住宅は、壊すか、耐震改修するか、という課題を建築以来、30年以上にわたって強要され、それがこの時期に建てられた住宅の建て替え時期(寿命)を早めたことは確かだろうと思います。地震が起こる度に、心配して過ごすわけですから、家族の心労も並大抵ではなかったと思われます。

耐震基準の改正の時と同じことが「省エネルギー基準」の義務化でも起こりうる?

『2020年の「省エネ基準」といわれても、まだ公表もされていないので施工できない』これが、多くの施工店の理屈です。しかし表・1の経産省のZEH(ゼッチ)基準等で概案は示されています。ZEHの平準化が始まっている現在、公的な断熱評価ではこの基準が最も高性能を求めています。
今後、新築住宅を建設予定の場合、「省エネ性能」は2020年の義務基準の最低基準が予測される、現行の「省エネ基準」の最高等級4レベルで建築する必要があります。実は今、新築されている住宅の半数は2020年以降の最低基準、現行基準の等級4を満たしていません。2020年の「省エネ基準」に着目しておかないと50%以上の確率で、3年後に現在新築中の住宅の資産価値が激減してしまいます。35年の住宅ローンを組んだのに、残り32年にして断熱性能の「既存不適格」扱いされてしまうという、とんでもないことが目の前で起ころうとしているのです。
今回、九州住環境研究会が鹿児島市に建設している「HERT20」G1・G2モデルは2020年基準の6・7地域基準を上回る性能で建築されています。将来の「既存不適格リスク」を回避するためにも、これから住宅建築を考えている方には是非、一度見学を勧めたい展示場です。