Vol.47 COP20脱石炭で日本の立場、微妙!

石炭火力では、温暖化は止められないと石炭発電を進める日本の立場に非難が集中!
日本は交渉の足を引っ張る国としてNGOが批判を込め『化石賞』授与。

2014年12月26日更新

■排出量、2大国の米・中主導で脱石炭で一致。

ペルーのリマで開催されていた第20回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP20)は、今までの交渉とは様変わりし、排出量の2大国である、米国と中国の主導で一応の前進を見る事となりました。米中の排出削減策の要は二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電の抑制で、中国もまた第12次5カ年計画で石炭火力発電の抑制と再生可能エネルギーの拡大を打ち出し、米国ではシェル革命による天然ガスや石油の生産が急増し、脱石炭政策が進んでおり両大国の思惑が一致し、今までとは全く異なる対応を示す事になったようです。
米・中が主導する温暖化対策は、石炭火力を狙い撃ちする規制になる可能性もあり、原発事故以来、石炭火力が大幅に増えている我が国は、非常に苦しい立場に追いやられる立場になっています。

■世界の潮流に逆行する我が国の温暖化対策!

原発の再稼働を早めたいにもかかわらず、再稼働の見通しは全くたっておらず、再生可能エネルギーにも、送電や変電設備の対応が出来ないためにストップを掛けざるを得ない我が国は、世界から見ても非常に微妙な立場で、地球温暖化対策として日本政府が途上国の石炭火力発電所の建設を支援する方針に、脱石炭に逆行する流れとして国際的な批判の声が上がっています。
ペルーで開催中の国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)会場で、日本は交渉の足を引っ張る国として参加しているNGOから「今日の化石賞」に選ばれたことが報道されています。国内でも石炭火発の新設計画が相次ぎ、今までは環境先進国と言われた日本の立場として「日本は途上国に対し、再生可能エネルギーの導入にこそ資金を出すべきだ。石炭では温暖化を止められない」と言うのが各国のNGO(非政府組織)の言い分です。

■世界は我が国の対応をどの様に見ているか!

リマのCOP20の会場で、世界のNGO950を超える団体が参加する「気候行動ネットワーク」は大きな失望と共に日本政府を批判し、化石賞を贈りました。授賞理由は「日本が支援し、インドネシアに建設する石炭火力発電所に拠出した約10億ドル(約1200億円)が、日本の温暖化対策を目的とする基金から出ていたため」でした。日本政府の立場は「石炭火力発電でも、エネルギー効率が高ければ温室効果ガス排出量を減らす取り組みになる」と言う理屈ですが、これは国内で原発から、新規の石炭火力に頼っている我が国の現状を代弁する理屈で、発電に伴う石炭火力の二酸化炭素排出量は、高効率の石炭火力でも液化天然ガス火力の倍に上るのが現実です。
しかも、日本は途上国に対し、「リープフロッグ」(英語でカエル跳びの意味)型の発展を呼びかけている削減先進国の立場であり、「リープフロッグ」は途上国が、化石燃料に頼ることなく、再生エネなどの導入で一足飛びに低炭素社会に向かう概念であることから、全く逆行していると捉えられているのです。
しかも、最大の排出国である米・中も脱石炭火力を宣言している中で、日本だけが石炭火力に戻るという、逆行した考え方が問題視されているわけです。

■矛盾する我が国の環境対策に世界の怒りの声!

昨年11月に、ポーランド・ワルシャワで開かれたCOP19で日本の環境省は「途上国は先進国の技術を導入し、低炭素化を進めてほしい。化石燃料に頼らない発展は可能である。」と呼びかけており、石炭火力への支援は矛盾した対応と受取られて「化石賞」受賞となっています。
現在、国内で建設中や計画中の石炭火力が17基に上ることが明らかになっており、環境NGOの試算では、全基が稼働すると、現状に比べ、最大で年間5000万トンの二酸化炭素の増が積算されています。
さらに、2016年度の電力小売り全面自由化で、原則的に環境アセスメントが不要となる、設備容量が15万キロワット未満の新設で電力事業への新規参入の動きも目立ちます。環境NGO「気候ネットワーク」は、少なくとも16基(15万キロワット未満)の建設準備が進んでいるということです。

■米英は石炭火力を規制、世銀も融資制限!

米環境保護局は、発電部門から出る二酸化炭素を05年比で3割減とする規制案を提示し、石炭火力が規制の主な対象となり、多くが運転停止を求められそうです。また、EU(欧州連合)も石炭火力発電所新設にはCO2を回収して貯留するための用地確保を義務付け、特に英国は、二酸化炭素の回収・貯留のセットでなければ新設を認めない方針を示しています。エネルギー開発などに融資を行う世界銀行も、石炭火力発電への融資制限方針を決定しています。
我が国も将来的な立場を明確にして再生エネルギーの活用に舵を切る必要がありそうです。