Vol.22 創エネルギー住宅に大幅な補助金制度

2020年の省エネ住宅義務化に向けて、本年度から住宅行政が大幅に代わります。
省エネ・創エネルギー・二酸化炭素削減住宅が標準に!

2012年07月04日更新

■本格的に開始された創エネ時代の幕開け。

「ひこうき雲」インターネット版で紹介しましたように、住宅がエネルギーを生み出し化石燃料に頼らない高性能住宅時代に向けたプロジェクトがいよいよ本年度から開始されました。
 それは、国土交通省の「ゼロ・エネルギー・ハウス」に対する上限165万円の補助事業と経済産業省の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」に対する上限350万円という補助事業で開始されました。
 さらに「地域型住宅ブランド化事業」など、地域材を採用することによる地域型住宅の普及という目的で、上限120万円の補助金制度など、地域の業者がグループを作って、地域ブランドを定着させて、地域にマッチした高性能住宅を開発普及させるという事業もあります。  この様に我が国の住宅行政は、創エネ・二酸化炭素削減に向け大きく舵を切りました。

■再生可能エネルギー固定価格買取制度開始!

さらに、再生可能エネルギーの固定価格での買取制度も本年7月1日から開始されました。
国の方針は脱原発なのか継続なのかまだハッキリしていませんが、国民の選択は、確実に脱原発に傾きつつあるようです。買取制度や補助金制度で太陽光発電などの創エネルギー設備が普及してくれば、我が国も脱原発に向けて舵を切って行かざるを得ないことでしょう。
買取制度で家庭用の買い取り価格は42円ですが、補助金制度を考慮すると48円程度の試算になるようです。
産業用の発電も含めて、この流れは、今後も加速して行くものと考えられます。

■「ゼロ・エネルギー」と「ネット・ゼロ・エネルギー」とは?

「ゼロ・エネルギー・ハウス」と「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」という何ともややこしい形で、2つの補助金制度が提示されています。
「ゼロ・エネルギー・ハウス」は、国土交通省が主導して、50棟未満の中小工務店が建設する「ゼロ・エネルギー・ハウス」に上限165万円の補助金を出す制度です。もう一方の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」は、経済産業省の主導で、主に大手ビルダーに向けた、補助制度で上限が350万円となっています。具体的には、国土交通省の「ゼロ・エネルギー・ハウス」支援事業は、
1・「住宅事業主の判断基準」の計算方法で標準的な住宅性能が概ねゼロとなるもの。
2・標準的な住宅の一次エネルギー消費量が概ねゼロになると見なす仕様に適合しているもの。
3・学識者により構成される審査委員会によって、1・2と同等以上の省エネ性能を有する住宅として認められたもの。さらに省エネ基準(平成11年基準)に適合する 適合する断熱性能を有するもの。平成24年度中に着工するもの。
となっています。

■ネット・ゼロ・エネルギー支援事業では350万円の支援。

経済産業省の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」支援事業は、昨年度までの補助事業である「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業」の延長線にあるもので、経済産業省の外郭団体である「環境共創イニシアチブ」がメーカー等によって提案されたシステムを「特殊省エネシステム」として認定し、その認定システムを導入することが補助金の条件になっています。さらに、太陽光発電などの創エネ設備の導入が必須で、燃料電池や蓄電池、太陽光発電等は補助の対象にはなりません。躯体の断熱性能についても、今後の住宅性能の向上に見合った、新たな数値が設定されハードルが高くなっています。(表・1)

■表・1 地域別、熱損失係数
Ⅰa・Ⅰb Ⅳa・Ⅳb
1.4 1.9 3.7

経済産業省の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」については、割愛しますが、お知りになりたい方は、Vol21をご覧下さい。今回の両事業において評価の物差しとなっているのは、本年、示されることとなっている新しい省エネ基準の「年間一次エネルギー消費量」と「年間冷暖房負荷」で、冷暖房のために使用される年間のエネルギー使用量で住宅性能が決められることになるので、Q値(熱損失係数)などの数値よりもより現実的な対応になるものと考えられます。ヨーロッパの基準では、年間冷暖房負荷15Kwh/m・年間一次エネルギー消費量が120Kwh/m(家電も含む)です。

■自立循環型「ゼロ・エネルギー・ハウス」の開発。

本紙をご覧になられる頃には、応募期間も終了していることと思われますが、この様な支援事業は、今後も行われます。大切なのは、設備に頼る「ゼロ・エネルギー・ハウス」は、設備の更新時期に再び大金が必要になります。住宅性能だけで「ゼロ・エネルギー」に近づける「高性能+創エネルギー」が本物の「ゼロ・エネルギー・ハウス」です。設備の更新資金を稼ぎ出す住宅、それが自立循環型「ゼロ・エネルギー・ハウス」なのです。